β2GPIネオセルフ抗体と不妊症の関連

 2019年に体外受精で生まれた子の数は6万598人で、総出生児に対する体外受精児の割合は今や14人に1人となっています。日本では体外受精と顕微授精の総治療数も45万8101周期(※)と、2019年に過去最多を更新しました。((※)周期:治療を行った月経周期(約28日間))

図1.不妊治療の種類毎(凍結胚移植(FET:緑) ・顕微受精(ICSI:赤)・体外受精(IVF:青))の治療周期数
出所: 日本産科婦人科学会「ARTデータブック2020年版」

β2GPIネオセルフ抗体検査は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)「成育疾患克服等総合研究事業―BIRTHDAY/女性の健康の包括的支援実用化研究事業―Wise」(研究開発代表者:神戸大 山田 秀人 教授)において、不妊症患者の血液サンプルについても本抗体を測定することによって、世界で初めて不妊症とβ2GPIネオセルフ抗体の関係を明らかにするための臨床研究が行われました。不妊症、特に子宮内膜症や反復着床不全において、β2GPIネオセルフ抗体が、高頻度で陽性となることが明らかにされました(下図参照)。研究班では、妊孕能と周産期予後の改善のために、妊娠前にネオ・セルフ抗体を調べ、陽性者に抗凝固療法を行う新たなプレコンセプションケア(※)と治療法を確立されようとしているとのことです。

(※)プレコンセプションケア(Preconception care)とは、将来の妊娠を考えながら女性やカップルが自分たちの生活や健康に向き合うことです。

不妊症(特に子宮内膜症、反復着床不全)とβ2GPIネオセルフ抗体検査陽性例との関係

2022年6月28日 医師向けセミナー 山田 秀人 
不妊症・不育症・産科異常におけるネオセルフ抗体より抜粋
出典:第四回日本不育症学会
「不妊症におけるβ2GPI/HLA-DR 抗体(ネオセルフ抗体)の関与」を加工して作成